『男はつらいよ』では 甥の満男が 靴のセールスの仕事に 「向いていないんだよ、俺」と嫌気がさしているところに 寅さんが 「伯父さんと勝負してみるか?」とけしかける。 そして、 「オレに売ってみな!」と満男に鉛筆を差し出すが… 満男 「おじさん、この鉛筆買ってください。 ほら、消しゴムつきですよ」 と売り込み感たっぷりに鉛筆の”説明”をしてしまう。 寅さんは 「道バタに品物並べて、 寄ってらっしゃい 見てらっしゃいの商売を20年、30年やってると 多少のコツが身につくんだよなぁ」 と興味深げな前置きでみんなに耳を傾けさせ… しみじみとした口調で 「この鉛筆を見るとおふくろを思い出すんだよ…」 「俺は不器用だったから、夜おふくろが削ってくれたんだ」 と感情に訴えかけるストーリーを始める。 「この辺に火鉢があって、きちんと おふくろが座ってさ 白い手にナイフを持ってスイスイ、スイスイ削ってくれるんだ」 「その削りカスが火の中に入るとなプーンといい香りがしてな」 と5感に訴える描写を身振り手振りしながらされると、 聞き手はありありとシーンを思い浮かべる。(イメージ&共感) そしてトドメの「人となり」を感じさせるエピソード 「きれいに削ってくれたその鉛筆で 俺は落書きばっかりして勉強ひとつもしなかった」 「でもこのぐらい短くなった分だけ 頭が良くなった気がしたもんだった…」 聞き手は 「私、これぐらいならまだ使ってた」 「昔は物を大事にしたなぁ〜」と 自分事に置き換えて、懐かしい昔を思い出す… 寅さんはこの後も、 木の温かさ、握り心地を 「鉛筆の味わい」として紹介していき…(買い手側のメリット) 「ちょっとそこに書いてごらん」 と満男に書かせてみる…(お試し) 満男 「わぁ〜久しぶりだな鉛筆で書くの!」 そして、この後の切り出しが絶妙! 「どう?デパートでお願いするとこれ1本60円はする品物だよ」 「でも削ってあるから30円だな。いいやいいや、タダでくれてやったつもりだ20円」(お得感) 「ね、すぐ出せ。さっさと出せ」(”今すぐ”の緊急性) 「細かいのあるかい?私が出しておこう」と払ってしまった後 「あ!」 とみんなが気づく。 「これを売らないと腹すかせて野宿しなきゃならねぇ」という危機感の中からきた「知恵」だと寅さんは言う。 「一流のセールスマンのトークがあれば 最高のセールスレターが書ける」 と言われるぐらいに 『興味を引く→共感→信頼→メリット→提案→お得感+緊急性』 このセールスの原則に従うとモノは売れていく。 普通の人はほとんどが 「言いたいこと(説明)」を「言いたい順番」で伝えてしまうが お客さんに伝えるべきなのは、 商品やサービスの”説明”ではなく… ”イメージ” そして、 ”感情”なのである。 あなたも、ちょっと視点を変えて お客さんの立場・感情をよく考えて 買ったモノ、受けたサービスをイメージさせるように 『伝える内容』 『伝える順番』 をひとひねりしてみませんか?